いつの話だよ
それに気づいたのはバイトに行く直前のことであった。
社員証がない。
いざバイトに行こうと準備をしている途中、いつもはバッグに入っているはずの社員証が無くなっていたのだ。
どこに置いたのか、前回のバイトの時に記憶を遡ってみる。答えはすぐに思いついた。
捨てていたのだ。
バイトで余った商品を持ち帰るときに使ったビニール袋に社員証を入れ、食べ終わった商品のごみと一緒にそのまま捨ててしまったのだ。
というわけで、いくら探しても無駄であるということに気づいた僕は、バイトの時間も迫っていることだしとりあえず社員証を諦めバイト先に向かうことにした。
絶対に店長に怒られる。しかも最近ちょっとしたミスを繰り返していたので、憐みの目を向けられることもしばしばあった。愛嬌があるわけでもないし、ただ評価が下がるんだろうな。それで怒られるところを後輩にも見られ、軽蔑されるんだろうなあ。
そんな憂鬱な気持ちでバイト先に向かっている途中、万が一、あわよくばバッグの中をちゃんと確認していなかっただけじゃないかと思いもう一度ポケットの中に手を突っ込んでみた。
すると何やらカード状のものがあることがわかった。これはもしかして。わずかな期待を胸にそのカード状のものを出してみた。
Tカードだった。
これもまた数週間前から無くしていた。
「それじゃないんだよなぁ。」
道端で僕はひとり呟いた。